外国人風カットはどこが違う?
卯月勲
2020.10.07
外国人風カットはどこが違う?
目次
欧米人と日本人の髪質の違いは?
欧米人の髪との出会い
髪色はブロンドか毛先に向かったグラデーションと毛束感のある明るいカラー、
ヘアースタイルは、風になびくような、ふんわりとした、
柔らかでエアリーな質感をイメージしてしまう海外の映画女優やファッション誌のモデル。
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違いを感じたのは、フランスでの体験。
ファッションショーの舞台裏でヘアスタイルの仕込みをした時でした。
それまでもサロンに欧米人の方たちも来られていたので自信を持って臨みました。
しかし、現場で待っていたのは、強烈なクセ毛。
まずスタイリングをする前にこのクセ毛をキレイにのばすところから始まります。
いつも通りブラシとドライヤーでのばしますが、中々のびない。
日本人の方でもクセが強い方もいらっしゃるので、このぐらいなんとでもなると思い、気を新たに再挑戦、しかしのびない。
最後はあきらめて、アイロンを使いなんとかなりましたが、
今思うと、
ドライ状態からのブロースタイリングだったので、パネルごとに水スプレーで濡らしながらすれば、ここまで苦労しなかったように思います。
しかし、この経験により雑誌や映画を観る時のヘアースタイルの見方が変わりました。
このモデルさん、綺麗な髪してるけど、のばすのに時間かかってるんだろうなぁ、
また女優さんを観て、青空の下でのシーンはサラッサラッのストレートヘアーだったはずなのに、
雨のシーンでウェーブヘアになってしまっていたり。
そういう見方まで変わるくらい、印象深い出来事でした。
と長くなりましたが、何をお伝えしたいかと言うと、
強い・弱いの違いはありますが、まずほとんどの欧米人の方がクセ毛であるという事をご理解いただきたいと思います。
では日本人の髪は?
それに比べて、日本人の髪は何もしなくても(ブローで伸ばさなくても)真っ直ぐでサラサラの人が多く(以外とクセの方も多いようですけど)、
初めから下地ができてるという意味で、とても扱いやすい髪という事になります。
しかし、扱い辛さもあるようです。
良く耳にするのは、海外赴任されている日本人の方が欧米人の美容サロンに行って、カットをオーダーすると、相手の欧米人の美容師が嫌な顔をする事が多くある様です。
何故この海外の美容師が日本人の髪質を嫌がるのかと言うと、クセが無く真っ直ぐな髪なので、
カットをした後の髪の収まりや馴染みの悪さを感じてしまうようです。
ようは、髪が太く、多く、そして真っ直ぐで収まりの悪い日本人の髪を切っても、上手く仕上げる自信が無いので、切りたくないのだと思います。
前述の通り、欧米人の髪はクセが有り細毛なので、どう切っても収まりが良く、カットする側からすると、言い方が悪いですが何とかなってしまうので、やり易い髪と言えるかも知れません。
そして海外赴任されている方はどうするかというと、日本人美容師がいればそこに行くでしょうけど、いない場合は同じ直毛を持つアジア系の方のサロンに行かれるようです。
欧米人の様に、透けて見えるような空気感のあるスタイルにするには
とは言え、あの欧米人の柔らかで透け感のある髪に憧れる日本人は多いと思います。
では、どうすれば外国人風のヘアスタイルになれるのでしょか?
まずは毛と毛の間に空気を含みやすい状態にするため、毛の中側や根元から髪の量を減らすことが重要です。
髪の太さをいきなり細く変化させることは容易ではありません。まずは量を軽くする事で浮遊感や空気感を作ります。
しかし日本人の髪は、直毛で黒毛の方がほとんど。
まず透け感が出ない。
そのために必要なのがカラー。
通常明るくするためのカラーには日本人の黒毛の色素を脱色する効果があります。この色素をメラニン色素と言いますが、これが髪に残っていればいるほど光に透かしても、一向に透けてきません。
皆さんも経験があると思いますが、カラーをした後、室内で自分の髪色が余り明るくなって無いと思ったのに、ある日天気の良い晴れた日、屋外で写真を撮影した時に思ったより明るく感じた事はないでしょうか?
そうです、髪の元々の色素は光をあまり透過しませんが、カラーの色素はいくら暗く染めたとしても光に透かすと明るく見えてしまう特徴があります。
そしてこれに、毛の動きや陰影から感じる凹凸を見せるためのにアイロンでのセットやパーマによるウネリを加えるとさらに軽さが表現できます。
少し話を戻します。
今回のお話のテーマは外国人風のカットに関してです。カラーやパーマの話はまたの機会に深く掘り下げたいと思います。
先程、毛の量を減らす事で透明感が生まれて軽さが表現できるとお話ししました。
もう一つの問題が。
直毛故に、毛先が丸まり馴染みが出やすい欧米人のくせ毛とは違い、ハサミで真っ直ぐにカットすると、切り口が揃ってしまい馴染みが出ない上に、カットを終えた瞬間にあちこちにハネが…
これを解決しないと欧米人の様なフンワリとして馴染みの良いヘアスタイルは程遠くなってしまいます。
何故、キチンとカットしても毛先がはねるのか
ではどうしてはねてしまうのでしょう?
単純にカットが下手?
もっと毛先を薄く削いでしまえば?
そもそも、ハサミでなくレザーの方が良いのでは?
などと、様々なご意見があるかと思います。
どのご意見も遠からず、間違いでは無いですが、
少し違う角度からのお話をしたいと思います。
まず、当たり前ですが、頭は丸いというところから。
通常、私達は濡れている髪を真っ直ぐに上の方向へ引き出し、真っ直ぐにカットしいきます。
当然、直線と直線のつながりではカクカクとして、角張ってしまうので、角を丸めるように切ります。
しかし、この丸い頭に対して真っ直ぐにカットする事がそもそもハネにつながります。
少し専門的になりますが、
ハネやすい部分はというと、
多いのが衿足やもみあげの部分かそこよりもう少し上の部分で、
耳の上や耳の後ろの辺りの毛先がはねる事が多くないでしょうか?
何故かというと、この場所が、その影響を一番受け易い場所だからです。
さらに専門的なお話をさせていただくと、
丸い頭から生えている髪の毛を上の方向に引き出し、真っ直ぐに切るとどうなるのか?
真っ直ぐに切ったはずの切り口が、
肩の上に落とし時に中央がえぐれたようになります。
これがハネる原因になります!
図A
では、どうしたらハネないようにカットができるのか。
それを可能にするカットテクニックが、このあとお伝えするシルキーカットという、日本人が日本人のために生み出してたテクニックになります。
シルキーカットとは
せっかく艶のある日本人の髪質、それを活かしたカットテクニック
まず、このカットテクニック、大きく分けて3つのテクニックを使い仕上げていきます。
まず一つ目は、セニングというソギ鋏を使わずに、髪と髪の間に空間を作り、軽さや透明感を表現します。
ソギ鋏は髪を軽く見せたり量を減らすのに用いますが、
切り口が鋭く、多用すると、せっかくの日本人のキレイな髪がパサついてしまいます。
なので、このハサミを使わずに、カーヴシザーという刃がわん曲している特殊なハサミを用いて、
毛と毛の間に、内側に収まるようなカーヴ状の空間をつくり、軽いながらも質感を壊さず、艶があり透明感のあるヘアスタイルに仕上げることが可能になりました。
そしてこのカーヴシザーを使い、もう一つのテクニックがハネないヘアスタイルを生み出します。
毛先が風にゆれる、なびく、でもまとまりがあるスタイル
この前の項でお伝えした、丸い頭から生えた人の髪を、上方向に引き出し直線に切れば、
元の位置に落とした時に、直線だった切り口が
真ん中がえぐれた形になり、ハネやすいヘアスタイルになってしまうとお伝えしました。
それをこのカーヴシザーを使い、切り口が丸く、首を振っても、風に髪がなびいてもハネない、そしてまとまりのあるヘアスタイルに仕上げることが可能になりました。
しかも、カーヴシザーで丸く切るだけでは、特殊テクニックとは言えません。
髪の毛を切る時に、本来落ちてくる場所に集め、切り口を丸く切ってあげる、ここにその最大の特徴があり、
ハネないヘアスタイルに仕上げることが可能になる最大の理由があります。
図B
ブロードライだけでスタイリング、首を振っても元に戻るカットスタイル
そして、もう一つ重要なものが、毛先の質感。
日本人のヘアスタイルにおいて硬く見え易い理由に
直毛ゆえに馴染みの悪い毛先の質感があげられます。
では、またソギ鋏を使い、毛先が透け透けになるほど鋤いてしまえば良いのかというとそれも違います。
竹ぼうきの様なバラバラな質感ではなく、食器のフォークの様に先は揃っているけど、隙間が空いている様な質感に毛先を仕上げる事で、
乾かすだけでスタイリングをした様なまとまり感や艶感のあるスタイルに仕上げる事が可能になります。
パリジェンヌのようにナチュラルでフェミニンなスタイルをご提供いたします
少し専門的な話になってしまいましたけど、
私もこのテクニックに出会うまで、当然ですが、ソギ鋏を多用してましたし、レザーを使う事もありました。
今でも仕上げたいスタイルによってはこれらの他のテクニックを使います。
しかし、
カットのテクニックだけで日本人の髪質を欧米人の様なナチュラルでフェミニンなスタイルに、
そして日本人のキレイな髪を、質感を壊さずに表現するとすれば、
間違いなくこのシルキーカットテクニックを使い表現いたします。
アジア圏を中心に席巻し始めていて、日本でも使える美容師は一握りのこのカットテクニック、
まだ未体験の方はぜひ一度、お試しなってみてはいかがですか?